IMCCD 高山さんからの手紙 #010
カンボジアから日本を見て思うこと
東日本震災を機に取り戻しつつある「日本人の心」
私はカンボジアに来て11年目になる新しい年を、タサエン村で迎えました。カンボジアのお正月は4月13日から15日のため、日本のお正月にあたる期間のうち、休日は1月1日のみ。普通の休日で特別な行事もありません。
ところで昨年は、東日本大震災によって多くの方々が犠牲になったり、被害に遭われたりした悲しい年でした。被災されたみなさまは、悲しみに耐え、復興を信じて将来に望みをつなごうとしています。また、多くの日本人は被災地のみなさまを心配し、悲しみを共有しようと手を差し伸べています。この大惨事を経験した日本人は、今、「本来のよき日本人の心」を取り戻す兆しがあるように思います。
「他人を思いやる豊かな心」を取り戻したい
日本は世界に類のないすばらしい歴史を持つ国です。四季に恵まれた美しい自然の中で、人々は農耕・漁業などを通して助け合いながら生活をしてきました。有史以来、日本人に適したしつけや教育がなされ、家族や地域を大切にして自分よりも周りの人に気を配ってきたのです。
しかし、第二次世界大戦以降、日本はよくない方向に変化したように思います。敗戦国になった日本は復興に向けて懸命に頑張り、世界有数のお金持ちの国になりました。しかし、多くの日本人は「今の日本は何かが間違っている」と思っていると感じます。
これを風船にたとえるなら、お金を入れる風船は大きく膨らみました。しかし、長い歴史の中で育んできた「豊かで優しい心」という風船はしぼんでしまったのではないでしょうか。
日々の生活の中でも笑顔を絶やさない子どもたち
今、日本は「何が正しくて、何が正しくないか」がわからなくなっている状況です。枝葉末節を改善する前に、幹にあたる「本質的な価値観」に気づき、それを共有しなければなりません。それが「他人を思いやる豊かな心」です。これを軸に国が運営されれば、人々は「心地よい心豊かな生活」が送れると思います。
私が今、滞在しているカンボジアのタサエン村は、まさにそんな地域です。地雷があり、道はでこぼこで、病院はなく、貧しい集落で人々は生活をしていますが、人を思いやる優しい心と笑顔にあふれ、助け合って生活をしています。
私は日本に帰国している間は、各地でこのようなカンボジアのことをお話しさせていただいています。日本全国に笑顔が満ちあふれる社会、つまり「豊かな心の風船」がふくらむ日が来ることを信じて、今後もその活動を続けていきます。そして周囲の人々にどれだけ優しい思いやりの気持ちで接することができるかを実践していきたいと思います。オークンチュラン(注:ありがとうございます)